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中国日記(その2)

2006年9月19日(第2日目)

朝6時に目が覚める。支度をしてまずは鶏林荘へ行く。荷物を預けてから、近くの「キムパ天国」でうどんとキムパ(3000ウォン)の朝ご飯を食べる。まだ時間はたっぷりあるので、歩いてロッテホテルへ行く。大韓旅行社のカウンターには8時ちょっと過ぎに着いてしまったが、受付だけ済ませてロッテデパートの周りをぶらぶらして時間をつぶす。出勤途中のサラリーマンがせわしなく行き交う。集合時間になるのでカウンターに戻ると、既に10人くらい集まっている。バスの駐車場へと案内されて、ホテルからのピックアップ組と合流して、バス2台で板門店へ向けて出発する。世宗路を北へ進み、光化門前を左折し、トンネルを抜けて新村へ。さらに進むと「自由路」という出来たてのような道路を臨津江に沿って走る。川に沿って有刺鉄線が張られ、所々監視小屋もある。一昨年はこの民統線を鉄道でいとも簡単に越えてしまったが、今年はバスで越える。道中ガイドが板門店についての説明をする。言葉の端々から太陽政策には反対である様子がうかがえる。祖国統一をするべきか否か、他国の人間が軽々しく論ずるべき事ではないが、北が南を併合するというのは最近の歴史の流れから見ても現実的ではないと思う。その逆で南が北を併合するというのが現実的ではあるが、北のインフラ整備の遅れなど財政的にかなりの負担になるだろう。しかし北の豊富な地下資源と労働力を活かすことができれば、財政負担も一時的なもので終わるのではないだろうか。東西ドイツの統合の時と同じように一時的な財政負担に南の人たちがどの程度我慢できるのかにかかっていると思う。

板門店最初の検問所に到着する。兵士がバスに乗り込んできて、全員のパスポートを念入りにチェックする。乗り込んできた時には判らなかったが、背中には自動小銃を背負っている。チェックが完了してバスは民統線を越える。しかしガイドの説明によると、統制区域内にも住んでいる人たちがいるのだそうだ。ちゃんと集落があって、農業で生計を立てているとのこと。勝手に出入りできない地域なのに、住んでいる人たちがいるのはちょっと意外だった。途中、いくつもの敵の侵入を防ぐゲートをくぐる。コンクリートでできたアーチの上に、大きな岩がいくつも載せてある。敵の侵入を察知すると、爆破して道路を塞ぐ、そんな仕掛けらしい。もう一度パスポートのチェックがあって、いよいよキャンプボニファスに到着する。ここで共同警備区域(JSA)についての簡単な説明を聞き、重要な書類にサインをする。そう、「命の保証はない」ことを承認する書類である。ここからは国連軍のバスに乗り換えて、いよいよ共同警備区域に向かう。共同警備区域では、北に向かって手を振るな、声を出すなと再度念押しされる。過去にトラブルになった事があるかのようにガイドが言う。南の「自由の家」から北の「板門閣」までは300mくらいしか離れていない。その間に水色に塗られた会議場がいくつも並んでいる。北の監視カメラがこちらを監視している。監視小屋も人の姿は見えないが、監視されている気配がする。そしていよいよ会議場へ。ここの中だけはわずかではあるが、軍事境界線を越えて北朝鮮側へ入れる。室内は韓国軍の兵士がしっかりと守っている。拳を握り、仁王立ちになっている。写真を撮っても、声をかけても微動だにしない。窓の外に目をやれば、境界線に北朝鮮軍の兵士が立っている。胸には金日成バッジが見える。

再びバスに乗って、前線の見張り小屋へ。この時ばかりはバスの前にも護衛の兵士がつく。北朝鮮の「宣伝村」と呼ばれる集落が見える。建物はいくつも建っているのだが、ひっそりとしていて人の住んでいるような気配は全くない。最前線の「帰らざる橋」のたもとの監視小屋は無人なんだそうだ。兵士ですら配置しておくのは危険と言うことなのか。そうならば、映画「共同警備区域JSA」のストーリーは(もともとフィクションではあるが)実際にはあり得ないと言うことだ。またバスに乗り兵士の先導のもと、その危険な「帰らざる橋」のたもとまで行く。写真は撮ってもいいが、絶対に手は振るなと念押しされる。バスから降りることも許されず、車窓から「帰らざる橋」を見る。イ・ビョンホン扮する兵士が倒れていたのはこの橋の上だ。何事も起こらない(起こって欲しくない)であろうけれど、やはり緊張する。見学を終えてキャンプボニファスまで戻るとほっとする。ここでしばらく休憩と、お買い物タイムとなる。ソウルから乗ってきたバスに乗り換えて来た道を戻る。途中、高陽市あたりになるだろうか、何もないところの食堂で、ビュッフェスタイルの昼食をとる。本当に何もないところで、食事が終わっても行くところも、見るものもない。食堂の隣に小さな店が一軒だけあって、ここで缶コーヒーを買って出発までの時間をつぶす。予定通り3時少し前、ロッテホテルの駐車場で無事解散となる。

このまま旅館へ帰ってしまうには早すぎるので、今日も教保文庫に寄っていく。辞典のコーナーやガイドブックのコーナーを立ち読みして、日韓辞典を一冊買う。ポケットサイズとコンパクトサイズの韓日辞典は持っているが、今回はもう少し大きな日韓辞典を買い求める。持っている辞典の数と韓国語の能力は全く比例しないのだけど、以前から日韓辞典も欲しかった。昨年は工事中で埃っぽかった清渓川もきれいに整備されて、都心のオアシスになっている。保育園のお出かけか、園児達が遊んでいる。一旦旅館に帰って一休みしてから、改めて明洞へ夕食に出かける。あちこちぶらぶらして、結局「明洞餃子」でコンククス(緑豆麺、6000ウォン)を食べる。緑豆で作った麺と言うだけあって緑色をしている。スープも豆乳のような白いスープで、さっぱりしていて健康にも良さそう。



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2009-4-16 作成、2009-4-23 修正
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