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中国日記(その2)

2006年9月23日(第6日目)

北京三日目の今日は、北京動物園へ出かける。お目当てはもちろん「大熊猫」だ。昨日と同様、朝Sさんがユースを訪ねてくる。工人体育場北路を西へ向かって歩いて地下鉄東四十条駅へ行く。とにかく広い通りで片側3車線の車道があり、その外側に緑地帯、さらに自転車道があって、歩道がある。しばらく行くと通りの名前になっている工人体育場と工人体育館がある。ここもオリンピックに備えてか、改装工事をやっている。さらに行くと、また広い通りに出て、東四十条駅がある。地下に潜り窓口で切符を買う。自動販売機なんてものはないのだ。改札口もおばさん改札係で、改札係というよりモギリのおばちゃんといった風情だ。上海の地下鉄は近代的だったが、北京の地下鉄は古いので近代的な設備が導入されていなかったのだろう。合理化なんかすると人があふれてしまう国だ。いかにも共産圏という感じのする、野暮ったいデザインの電車に乗って西直門駅へ。電車は野暮ったいが、乗り心地は決して悪くない。保線も車両のメンテナンスも、きちんと行われているように感じられる。

大熊猫駅から歩いて10分くらいで、北京動物園に到着。パンダ舎の見学には別料金が必要で、入園料と合わせて20元。正門を入ると真っ先に「大熊猫館」はあった。中へ入ると、檻の中のパンダは食事中である。しっかりと腰を下ろして食事に余念がない。しかし、このパンダ舎には構造上の重大な欠陥がある。通路から奥に向かって檻の中が低くなっているのだ。手前が高くなっているから、パンダは絶対にこちらを向いて座らない。座っていれば背中しか見えないのである。パンダ舎の外に出ているパンダもいるが、こちらも通路から離れた奥の方で、一段低くなっている所に隠れるようにして寝そべっている。一応、生のパンダは見ることができたが、背中や遠くで寝そべっている姿ばかりで、近くにいるパンダを見ることはできなかった。館内には売店があって、パンダ関連グッズを売っている。いくら中国でも、本場四川省以外にはここしかパンダはいないのか結構な人気だ。パンダ以外の動物たちは、ゾウやサイやキリンなどどこの動物園でも見られる動物たちだった。本当のキリン(つまりジラフ)は中国語では何と書くのかちょっと気になっていたが、「長頚鹿」と書くらしい。当然「麒麟」ではないと思っていたが、「長頚鹿」とは、全くその通りである。園内にはいたるところに売店があって、飲み物や軽食以外にも串焼きの肉まで売っている。動物たちを見ながら食べる焼き肉の味はどんなものだろうか。

北京動物園を出て、近くの「面愛面」という日本式ラーメン店で昼食を食べる。ちょうど昼時だから店内は満員状態である。二人分の空席を見つけて席に着く。メニューを見れば、日本式と言うだけあって具材やスープが色々選べるようになっている。本場中国では拉麺はあっても、塩ラーメンも味噌ラーメンもないから日本式ラーメンは新鮮に映るのかも知れない。
昼食を済ませて、再び地下鉄に乗って天安門へ行く。三度目の正直でやっと、故宮博物院に入れる。天安門横の公衆トイレに入って驚いた。オリンピックに向けて北京市が公衆トイレの衛生向上をしているのは知っていたが、ホントに驚いた。入るといきなり「売店」がある。その奥に公衆トイレ、まるで売店のトイレを借りるような感じで、今までの公衆トイレとは雲泥の差、月とスッポンである。個室にもちゃんと扉がついているし、なんと言っても無料だ。このトイレひとつ見ても、政府のオリンピックにかける意気込みが感じられる。

故宮巨大な毛沢東の肖像画の下をくぐって故宮博物院へ。故宮の前庭部分は一昨日の夜に通ったが、昼中はかなりの人出だ。60元のチケットを買って、中へ入る。内部は一部工事中で「太和殿」などは見えないが、それでもとてつもなく広い。「故宮博物院」とはなっているが、いわゆる博物館のように、収蔵品をショーケースに並べて展示するのではなく、建物のあちらこちらに何気なく置いてある。いかにも清の時代からずっとそこにあった、というような感じで展示をしている。皇帝以外は通ることを許されなかった階段には、龍のレリーフが施されている。屋根の飾りにも龍が載っている。龍は皇帝を表し、屋根瓦の黄茶色も皇帝だけが使える色だったらしい。展示室もあるにはあるが、ジオラマによる展示が主体で清の時代の風景や風俗が再現してある。ジオラマは精巧な造りで、何百体もの人形が並んでいる。人海戦術はお手の物とは言え、これだけのものを造った人たちには頭が下がる。ざっと見て、一番奥まで行って引き返す。とてもじゃないが館内くまなく見て回ったら、一日まるまるかかりそうだ。それでも紫禁城の半分も公開されていない。

今夜は、Sさんの友達も誘って夕食に行く予定になっている。店はおまかせで決めて貰ったが、火鍋(中国式しゃぶしゃぶ)の店が予約してあるらしい。店に着いて、席に案内されると既に鍋がセットされている。二つに仕切った四角い鍋には、赤いスープと白いスープが入っている。どちらのスープにもキノコや香草などが入っている。ほかにも薬草などが入っていて、身体に良いのだそうだ。仕事を終えた友達も集まってくる。全員が揃ったところで、自己紹介をする。皆Sさんと同じ職場の仲間だそうだ。お待ちかねの食事を始める。肉や野菜をスープに入れて、火が通ったら食べる。日本のしゃぶしゃぶと全く同じ作法だ。四川式の赤いスープはもちろん唐辛子の色だが、ひと口食べてむせそうになる。半端な辛さではない。韓国料理の比ではないが、これが四川料理の神髄「麻辣」だという。ふた口目は覚悟ができているのでむせることはないが、辛いものは平気な方だけれども、これだけ辛いと多くは食べられない。白い方は何のスープか聞き忘れたが、こちらは全然辛くはない。皆赤い方を平気で食べているが、以後お子ちゃま味に専念する。何回も追加注文をしていい加減お腹がふくれてきたところで、Sさんが何かを注文した。何か白い固まりを持って、店員がテーブルの前へ来る。白い固まりはみるみるうちに長いひも状になっていく。見事な手さばきに感心している内に、手延べうどんが出来上がる。鍋料理の〆にうどんを食べるのは日本だけではないようだ。手延べうどんだからコシがあってすごくおいしい。お腹もふくれて、今日はお開きになった。5人でお腹いっぱい食べて250元くらい、中国料理はやはり現地の人と大勢で食べるに限る。
今いる場所は、東三環南路のすぐ近くだそうだ。ならば東三環北路にあるユースへは、真っ直ぐ歩いていけば帰れるはずだ。距離もそんなに遠くないはずだ。皆と別れて、東三環を北に向かって歩いていく。まだ遅い時間ではないので、人通りが結構ある。街路灯がよく整備されていて、真っ暗なところもない。怪しげな人や物に遭遇することもなく、一時間ほどでユースにたどり着いた。路地裏などに入り込めばその限りではないが、少なくとも大通りを歩いている限りはトラブルに巻き込まれたり、怖い思いをするようなことはなさそうだった。



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2009-4-16 作成
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